春ソロの進化⑤花鳥風月とエアロスミス
TBSテレビ「じょんのび日本遺産」は文化庁が認定するストーリーのある土地=「日本遺産」を“ゆったり”“のんびり”と巡る旅番組。日本各地の歴史的魅力や特色を通して、文化・伝統を再発見できる。
エンディングテーマの「花鳥風月」も泣きのギターがエモーショナルで素晴らしい。ソニーミュージックのホームページの言葉を引用すると、「1曲の中で日本の四季折々の表情豊かな風景に出会える不思議な物語絵巻のようなバラード」だ。初めてフルバージョンを聴いたのは18年12月の春ソロツアー「MICHIYA HARUHATA LIVE AROUND 2018 Continue」東京公演だったが、プロジェクションマッピングによりスクリーンに映し出される映像とのコラボレーションが美しく、感動で鳥肌が立った。
花鳥風月でドラムを担当したSATOKOは「私の中ではAerosmith(エアロスミス)の「crazy」のイメージ」と語っている。1993年発売のアルバム「GET A GRIP」に収録されているバラードで、シングルは全米7位になった。ミュージックビデオにはスティーブン・タイラーの娘リブ・タイラーも出演している。
日本最大のハードロック・ヘヴィメタル専門誌「BURRN!」に「日本の歌謡曲風」と書かれ、不快になったのをよく覚えている。ただ、SATOKOの解釈や、「日本風」というハルのコメントを考えると、その評価もあり得たのだろう。
エアロスミスも好きなバンドで、ライブにも行った。中でも「crazy」が一番好きで、TUBEを含めてこれまで最も多く聴いた曲なのは間違いない。リピートして一日中聴くのは序の口。何千回聴いたことか。
何かに夢中になることの大切さを教えてくれた曲でもある。エアロスミスのアルバムが発売されたある年、私は先行シングルのオンエア解禁日に、ラジオの前で待ち構えていた。新曲が流れた後に「ファンを集めてアルバムの試聴会を行い、メンバー全員も出席する」という告知があった。
私は急いで「crazyを何千回聴いたか分からないほど、エアロスミスが好き。同じ時代に生きていることが幸せ」と書いて送り、イベントに当選した。おそらく誰よりも早く応募したと思っている。
親友を誘い、都内で行われたイベントに参加した。数十人がアルバムを聴き、その後あのスティーブン・タイラーやジョー・ペリーと対面した。スティーブンはハグしてくれた。一生忘れられない思い出であり、昨日のことのように覚えている。
だが、数年前に車を運転中に信号待ちをしていて、隣にTUBEのあるメンバーがいた時はもっと興奮した。知り合いだと思ったのかも知れない。思い切り手を振ったらこちらに気づき、窓を開けて少しだけ会話してくれた。偶然の出来事だったから興奮したのは間違いないが、私にとっては世界的なバンドであるエアロスミスより、TUBEの方が特別な存在なのも確かだ。
エアロスミスの「crazy」を何千回も聴いた上で、花鳥風月が似ているかと言うと、よく分からない。サビと、SATOKOがイメージして叩いたドラムは似ているが、花鳥風月の方がドラマチックでメロディアスだ。
むしろ、花鳥風月のハルのギターの一部はゲイリー・ムーアに似ていると感じる。前田さんとハルが六本木で偶然見かけて話しかけたことがあるギタリストである。1978年の名曲「Parisienne Walkways(パリの散歩道)」はギターが泣いてる途中で数秒ブレイクする箇所がある。
ゲイリーよりは短いが、花鳥風月も途中でブレイクする。カツオのサックスの後に音が止まり、泣きのギターを合図にSATOKOのドラムの連打から、最終盤に向かってドラマチックに盛り上がっていく。
TUBEの19年の野外ライブ「TUBE LIVE AROUND SPECIAL 2019 〜NATSUNO・O・MO・TE・NA・SHI〜」では2年越しに噴水バラード「君へのバラード」が披露された。直後の春ソロは「FULL MOON BOOGIE」と「花鳥風月」のメドレーだった。SATOKOでなく玲ニが叩くドラムのグルーヴに乗り、3万人を目の前にハルが感動的な泣きのギターを奏でる。TUBEにギターヒーローがいると、ファンが再確認した瞬間だった。
春ソロの進化④じょんのび日本遺産
TBSテレビ「じょんのび日本遺産」は文化庁が認定するストーリーのある土地=「日本遺産」を“ゆったり”“のんびり”と巡る旅番組。日本各地の歴史的魅力や特色を通して、文化・伝統を再発見できる。春畑道哉(以下ハル)はメインテーマ曲「Continue (feat.宮本笑里)」とエンディングテーマ曲「花鳥風月」を担当している。
「Continue (feat.宮本笑里)」は19年にリリースしたアルバム「continue」の核となった。春ソロ30周年の16年に「Play the Life」をリリースした後、楽曲の依頼を受けてスタジオには入り続けていた。タイアップに関係なく作っていた曲も5曲ぐらいあったというが、「Continue (feat.宮本笑里)」を作った時に、アルバムの方向性が固まり出した。
18年6月に「live image」に出演したハルは、共演した宮本笑里からアルバムをプレゼントされる。「ライヴの時、宮本さんからCDをいただいたんですけど、そのアルバムが心地良くて、毎晩寝る時とかに聴いていたんです」
ハルが気に入ったのは「You Raise Me Up」。アイルランドとノルウェー出身の2人組「Secret Garden」による02年の楽曲だが、様々なアーティストがカバーしている。
「ヴァイオリンのふくよかな太い低音が気持ちいいなと思っていて、今作っている曲で弾いてもらったら、世界が広がるなと思ったんです。それで、(宮本に)お願いして参加してもらいました」「曲そのものはだいぶ前から作り始めていて、日本遺産の映像を観たり、TUBEのツアー中もお城とかを見に行ったりしながら、イメージを固めていきました」
日本の宝でもある素晴らしい自然、伝統や文化を後世に大切に残していきたいという想いを込めている。18年の春ソロツアー「MICHIYA HARUHATA LIVE AROUND 2018 Continue」東京公演には宮本がゲストで出演した。演奏の際に、スクリーンに日本の美しい景色や文化遺産の映像が流された。だが映像が無くとも、ハルの伸びやかなギターと宮本のバイオリンの協奏を聴くだけで、脳裏に映像が浮かび上がってくるような壮大な曲だ。バイオリンとのコラボレーションで、新境地を開拓したのは間違いない。
TBSの紀行番組という点でいえば、ハルは1996年に「ニッセイワールドドキュメント 世界謎紀行・神々のいたずら」のテーマソングとして「Fantastic Place」を作っている。コーラスから始まり、メロディアスに展開していく好きな曲だ。
番組は水曜夜の「浪漫紀行・地球の贈り物」のコンセプトを引き継ぐ形で日曜夜に放映された。世界各地の歴史的な謎に迫るというコンセプトの路線を目指したが、ニッセイワールドドキュメントとしては最も短命となる1年間で終了した。
番組の不振はハルによるものではないが、ハルの名曲も流れなくなる訳で、打ち切りは残念なニュースではあった。それから22年。ハルは花鳥風月とcontinueの2曲で「じょんのび日本遺産」の世界観を完璧に表現し、テーマ曲を作るコンポーザーとしての能力を改めて示した。
春ソロの進化③live image

18年6月、春畑道哉(以下ハル)は「live image 」に初出演した。オーケストラと共演し、東京と大阪の2公演で「J'S THEME」「Blue Moment」を披露した。
6月14日、東京・Bunkamuraオーチャードホールでのimageを観た。ハルの楽曲がオーケストラとの融合でどのように生まれ変わるのかに注目した。

気になる曲目は、音楽監督を務める羽毛田丈史と打ち合わせて決めた。imageは「癒し系」のコンピレーションとしてソニーミュージックが2000年から発売しているアルバムが起源。代表曲とは言え激しい「jugaur」や新曲の「【Re:birth】」をやらないだろうし、納得の選曲である。ただ、19年のimageでは何と「FULL MOON BOOGIE」を披露している。こちらは観に行かなかったので激しく後悔している。
「J'S THEME」は春ソロツアーでは必ずやるし、「Blue Moment」も16年の春ソロツアーのアンコールで演奏している。羽毛田は「J’S THEME25th ver.」とオリジナルを聴いて、「2曲をミックスしてこのメンバーならではの、この日しかできないアレンジでやりましょう」とハルに提案した。
imageではオーケストラとの協奏により、より壮大なスケールに生まれ変わったようにも感じた。ハルは同じ位置に立ったまま動かず演奏し、TUBEや春ソロの時のようにギターヒーロー然としたアクションは控えた。
だが、ハルはやはりハル。ギターの音色は普段通り。他の出演者と比較すると、ハードロックやヘヴィメタルを出自とするギタリストが、異色の存在だったのは間違いないだろう。
ハルやTUBEを知らない観客はどう感じるのか。TUBEファンとしては異種格闘技に挑む心境でもあった。正直なところ、観客の反応は分からなかったが、演奏を観終わり、ハルの、そしてTUBEのファンであることを改めて誇りに思った私は心の中で叫んでいた。「TUBEのギタリスト、春畑道哉はこんなに凄い人なんです!」
この時、ハルは5月3日に始まったTUBEのホールツアー「TUBE LIVE AROUND 2018 〜燦々・晴レルヤ!Yeah!Yeah!Yeah!〜」の真っ最中。7月21日のファイナルまで、23都市26公演を行う合間に、リハーサルや曲作りもこなしていた。6月28日の神奈川県民ホール公演の翌日は、町田市立陸上競技場で「J'S THEME 25th ver.」のMV収録も行なっている。

前田亘輝の地元、厚木で行われた初日を含め、私もツアーを満喫していた。新曲「夏が来る!」の出来栄えも素晴らしく、ライブを観ている時間は本当に生まれてきて良かったと心の底から感じられる。
ホールツアーは2時間程度だが、近くでTUBEのパフォーマンスを堪能出来るのが最大の魅力。imageも素敵だったが、2曲は物足りないと感じたのもまた、事実である。
ハルはimageで出会いや発見があったという。fenderのインタビューでは「オーケストラと共演したのがきっかけで、今までと違うアレンジの進め方を思いついたり、挑戦したりするようになりました」と語っている。
19年にリリースしたアルバム「continue」に収録した「東京classical」はimageにインスパイアされた。「オーケストラとの共演がきっかけで、こういうアレンジがやってみたくなったんです。いろいろな楽器が次から次へと入っていて、贅沢な楽器の使い方をした曲ですね」
imageをきっかけに、コラボレーションにも挑戦した。アルバム「continue」のオープニングナンバー「Every day is a new day(feat.根本要【Stardust Revue】)」は、根本がサビのメロディを歌っている。
「ヘミングウェイの「老人と海」の一節をタイトルにするのはどうかと思っていたら、サビのメロディーが出てきたので、これを広げていきました。要さんに歌ってもらって、すごくポジティヴな曲になったので、オープニングナンバーになったんです」
imageに出演したバイオリニスト宮本笑里との出会いも、コラボレーションに発展した。
春ソロの進化②【Re:birth】&Jリーグ25年
春畑道哉(以下ハル)は18年にインフルエンザにかかり、LINEライブを中止したことがあった。自宅で静養している時は、我慢出来ずにギターを弾いていた。16年の東京公演の日はあまりに楽しみで早く目が覚めてしまい、自宅内を歩き回っていたとMCで明かしていた。毎年でもソロアルバムを出し、ライブをしたいとMCでもインタビューでも述べている。「来年もやりたい。(ホワイトミュージック、ぐあんばーるの菅原)社長にお願いしようかなあ」
きっとギターが大好きだからだろう。春ソロは30周年以後、進化を加速させ、活躍の場を広げ続けている。
18年1月、海外ドラマ「リーサル・ウェポン」シーズン2の日本版オリジナルエンディングテーマとして、新曲「【Re:birth】」を配信した。
爆破などの凶悪性やアクションシーンをイメージさせるスピードでスタート。メタルなどによく使われるドロップD(6弦を1音下げる)を用いた。TUBEでは一度も使ったことがないチューニングである。
「凶悪犯罪をイメージする部分では、それこそドロップDでアンプも強い設定にして。また友情や家族愛を感じさせるシーンでは温かいトーンを目指して、サビでは爽快感とポジティブさを出せるように」。様々なシーンがイメージとして浮かび上がるようなドラマティックな一曲に仕上がった。
5月にはJリーグが25年を迎え、代表曲「J'S THEME(Jのテーマ)」をリアレンジした「J'S THEME 25th ver.」を8月にリリースした。
ハルは「“変わるもの”と“変わらないもの”をテーマに、リアレンジしました。 “変わらないもの”の象徴として、ギターメロディは変えずオリジナルに忠実に演奏しました。シンセとリズムは変更を加えオリジナルよりもアクティブで未来へ向かっていくポジティブな楽曲に進化したと思います」と述べている。
20代でこの名曲を作ったことも驚きだが、改めて感じたのは四半世紀が過ぎても色褪せぬ輝きだ。「死んだ後も残る」と当時の川淵三郎チェアマンに言われたそうだが、数え切れぬほど聴いたのに飽きたことはない。「百年後もスタジアムで「J'S THEME」が流れてくれていたら、これほど嬉しいことはないと思っています」。Jリーグがある限り、不滅の名曲である。
6月には音楽と映像の感動コラボレーションコンサート「live image 18 dix-huit」に出演し、オーケストラと共演。「J'S THEME 25th ver.」と「Blue Moment」を披露した。さらに活躍の幅を広げることに繋がっていく。
春ソロの進化①30周年
春畑道哉(以下ハル)がソロデビューしたのは1986年。「春ソロ」30周年を迎えた2016年にアルバム「Play the Life」をリリースした。代表曲「LIFE」のミュージックビデオはライブとパーティーのシーンで構成されている。
節目を祝うパーティーに音楽家・春畑道哉を形作った10人を招いた。例えば、初期のTUBEの代表曲を作った織田哲郎は作曲家・春畑道哉に、先輩ギタリスト増崎孝司はギタリスト・春畑道哉に多大な影響を与えた。
アルバムはギターインストゥルメンタルながら、11月8日付けのオリコンデイリーランキングで3位を獲得した。異例のヒットである。
4年ぶりのソロツアー「Michiya Haruhata LIVE AROUND 2016 Play the Life」も全国6公演が行われた。セットリストの最後はアルバムに必ず入れるピアノ曲「Timeless」。04年の野外ライブ「あー夏祭り」ではギターインストゥルメンタルバージョンが披露され、映像化されている。
30周年のライブの最後。サポートミュージシャンは下がり、ハルが一人ピアノを弾く。幼少時のピアノの発表会やソロデビューした頃の写真がスクリーンに映し出される。ハルは3歳からピアノを習い、中学1年からギターを弾き始めた。「自分の音楽人生はピアノから始まり、音を奏でる喜びや沢山の人に出会わせてくれた」。ソロ30周年と、50年の人生を振り返る集大成。記念碑的なライブとなった。
TUBE「空と海があるように」
TUBEの偉大さを示す一つの要素は、楽曲数だろう。天才的なメロディメーカー、コンポーザーである春畑道哉(以下ハル)はTUBEで400曲以上、ソロ活動で約200曲を作り、外部への提供曲も多数ある。
好きな曲や思い出を挙げればキリがないが、一つだけ選ぶなら…私は「空と海があるように」である。
発売は2010年12月8日。04年の「Miracle Game」以来となる冬のシングルだ。作詞は前田亘輝(以下前田さん)、作曲はハル。読売テレビ・日本テレビ系の「情報ライブ ミヤネ屋」エンディングテーマに使用され、番組内でメンバーが演奏したこともある。
毎週月曜夜のラジオ「前田亘輝YOU達HAPPY」を欠かさず聴いている。ウ●コを含む前田さんの下ネタは深夜ならではだが、たまにドン引きすることもある。だが、「誰かに贈りたいTUBEの曲」のコーナーでは、リスナーからの心温まるエピソードを聞けることも少なくない。馴染みの曲でもラジオで改めて聴くと、TUBEの素晴らしい楽曲と前田さんの歌詞の魅力を、新たに発見出来る。
このコーナーに「空と海があるように」をリクエストしたことがある。贈りたいのは祖母。100歳の誕生日に、ふと思いついて番組へメールを送った。良く晴れた秋の朝だった。
生放送ではないため、放送される何日前に収録しているのか分からない。メールを送ってからしばらく、いつ読まれるかとワクワクしながら聴いていた。だが、読まれないことが数回続き、採用されなかったのかと思っていた。
欠かさず聴いていると書いたが、リアルタイムで聴けないこともある。年が明けたある日、帰宅する車の中で「radiko」のタイムフリー機能を使い、ラジオを聴いていた。すると、私が長々と書いたメールを前田さんが読んでいる。前田さんとカッパさんは祖母の100歳を「良かったですね」と祝福してくれた。
有り難いし嬉しいのだが、他のリスナーには関係ない。「空と海があるように」が大好きなファンにとって貴重な証言となったに違いないのは、その後。前田さんが「余談なんだけど」と言いながら、歌詞を書いた経緯を語ってくれたのだ。
18年のシングル「夏が来る!」のカップリング「潮風の中で」は幾多の名曲を作った前田さんとハルにとり、初体験でもあった。所謂、「詩先」。詩を前田さんが先に書き、それをイメージしてハルが曲を作った。
他の曲は全て、ハルが先にメロディを作り、それに合わせて前田さんが歌詞をつけている。「空と海があるように」も、先にあの雄大なメロディがあり、前田さんは後から歌詞を書いている。
話を戻すが、前田さんはラジオで、「空と海があるように」の歌詞を書いた経緯を述べている。前田さんがお世話になった名古屋の会社創業者が70代前半で亡くなる前に、様々な話を前田さんにしてくれたという。「家族って何かとか。色々な話を聞いて、あの曲を書いた訳だ実は」「お前も惚れた晴れたとかじゃなくて、大人の曲を書いてみろ、と言われて書いた曲」「あれはTUBEのああいう曲の初めてのトライだったんじゃないかな」
カッパさんも思い出を語った。「ラジオやる前に会ったときに、前田さんがすごく良い曲が出来たと言っていたのをすっごく覚えています。聴いたらやっぱりすごく好きなタイプの曲で」。
「これが後の、君の大好きな「灯台」に繋がっていく」(前田さん)
「すごく世界観が似ているというか、これはすごく良い曲ですよ」(カッパさん)
「命は繋いでいくものなのか、生き切るものなのかっていう現代のテーマに繋がっていくんじゃないの」(前田さん)
「本当に良い曲、これは」(カッパさん)
ー中略ー
「100歳まで生きるっていうことと、繋ぐということで生き切るという、色々な選択肢がある時代を迎えて、またこの曲がどういう、皆んなに捉えられ方をするのか楽しみだなあ、という気がする」(前田さん)
「このタイミングでかかるという、聴こえ方とか聴き方、感じ方も変わると思うので」(カッパさん)
「じゃあちょっと歌詞に注目して聴いてもらいましょうか。ラジオネーム●さんが、100歳になったおばあちゃんに贈りたい曲。TUBEで、空と海があるように」(前田さん)
人は笑い涙しながら 愛をゆっくり育て
空と海に溶け合うように いつか光に還る
自分よりも大事な人を 想いながら
人は悩み苦しみながら 夢を枕に眠り
巡る時代に振り回される ただの旅人だけど
この胸に守りたいもの 確かにある
時を超え譲れないもの 君にもある
(「空と海があるように」抜粋)
映像化されているライブでは17年の冬のアリーナツアー「TUBE LIVE AROUND 2017 “Unknown 4” 〜冬でもアリ⁉ーナ〜」、13年夏の野外ライブ「TUBE LIVE AROUND SPECIAL 2013 “HANDMADE SUMMER”」で演奏されている。
17年、13年はいずれもアンコール、セットリストでは最後から2番目に披露。曲の後は前田さんのMCがあった。特徴として、TUBEのライブでは珍しく手拍子がなく、ファンが聴き入る点が挙げられる。
17年はバイオリン、ヴィオラ、チェロのストリングス、ピアノやキーボードに加えて、ギター、ベース、ドラムにもサポートミュージシャンがおり、重厚な編成による演奏が観られる。音楽監督・武部聡志のアレンジも効いており、この曲の音楽性の高さを堪能出来る。
一方、13年のスタジアムライブは17年に比べるとシンプルとも言える、通常の野外ライブの編成。前田さんが一人一人に語りかけるように、感情を込めて歌うのが印象的。
17年も13年も中間のギターソロのあと、ベース、ドラムと続けてカメラが抜くパートがあり、見所の一つだ。スピードのある曲ではないが、ハルのアーミングも効果的だ。
因みに、17年は春のホールツアー「TUBE LIVE AROUND 2017 迷所求跡ツアー ~My Home Town~」29公演のうち、6月10,11日の大阪でのみ演奏されたが、13日の出雲市以降、セットリストから姿を消した。大阪公演は観に行ったので幸運だった。unknown4の3公演と合わせて、この年は5回、聴くことが出来た。
ラジオで前田さんが触れたように、「空と海があるように」と、30周年を迎えた15年の冬のシングル「灯台」は繋がっているという。この曲も家族や人生、命を描いている。
「灯台」
人 夢 愛 遥かな旅
振り返れば 家族と歩く航跡(みち)
七色の輝き
それが生きた証し
(「灯台」抜粋)
近年ではクノールのCM曲「SUMMER TIME」「夏が来る!」「いただきSUMMER」はTUBEの「ど真ん中」。爽やかで底抜けに明るく、キャッチー。一瞬で代名詞の「夏」が来る。
「空と海があるように」はそうではない。だが、歌手・前田亘輝、作詞家・前田亘輝の成長と成熟、表現力。多彩な楽曲を作れる作曲家・春畑道哉の才能。そして何よりも、定着している「夏」というイメージのお陰で、ともすれば隠れがちなTUBEの音楽性の高さが感じられる。